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天疱瘡の原因・症状・検査・治療について

公開日: : 自己免疫疾患

天疱瘡の原因

天疱瘡は皮膚にさまざまな大きさの水疱ができる病気で、多くの場合前兆症状がありません。
なんらかの感染症や虫さされなどのきっかけがなく発症するのが天疱瘡の特徴と言えます。
小さな水疱が生じて落ち葉のような落屑になる落葉状天疱瘡と、大きなびらんが見られる尋常性天疱瘡の2種類に大別できます。

尋常性天疱瘡は口内など粘膜にも生じますが、落葉状天疱瘡は粘膜にはできないと言われています。
天疱瘡はステロイド薬の開発によって死亡率は激減しましたが、現在でも尋常性天疱瘡の場合は5~10%の割合で死にいたることもある重篤な病気と言えます。
天疱瘡を発症して特定疾患医療受給者証の交付を受けている人は、平成25年の時点で全国で5500人程度いることがわかっています。
海外では1年間で100万人に1~100人ほどと言われ、国や人種によって発症率はかなりちがってくると言えるでしょう。

アフリカや南米の一部地域では、落葉状天疱瘡となっている地域があるとの報告もあります。
発症年齢は40~60歳に多く見られ、男性よりも女性のほうがわずかに発症数が多いとされています。
天疱瘡の原因は、患者の血液に見られる免疫グロブリンというたんぱく質の一部にあります。

免疫グロブリンはもともとは体に侵入しようとするばい菌やウイルスを攻撃するために人間の体に備わったものですが、それが部分的に自分の皮膚と戦いはじめるために皮膚がダメージを受けます。
尋常性天疱瘡の場合は皮膚のデスモグレイン1という細胞同士を結びつける接着剤のような役目を担うたんぱく質を、落葉状天疱瘡の場合は皮膚のデスモグレイン1を攻撃します。
なぜ自分を攻撃してしまう自己抗体が生じるかということは、はっきりとは解明されていません。

天疱瘡の症状

尋常性天疱瘡の場合は、なんの前触れもなくいきなり水疱が生じます。
この時点では痛みはあまりなく、圧痛やかゆみを感じる程度です。
皮膚をこするなどの刺激を与えると皮膚の外側の層が下からはがれていって大きくむけて、びらんが生じます。

びらんは一度生じるとすぐには治らず、触れると痛みを感じます。
半数ほどの患者には口内にもびらんが生じて、それが初期症状としてあらわれます。
そして口内の粘膜に水疱と腫瘍が増えていって、ものを飲み込むのが困難となります。
そのため、食事を取ることがままならなくなることも少なくありません。

落葉状天疱瘡は尋常性天疱瘡よりも水疱が小さめで乾燥しやすいので、皮膚に落ち葉が付着したような見た目となります。
生じる場所はいろいろで、通常は背中や胸、顔面、頭など体中に広がります。
そうすると皮膚の表面からは多くの水分が喪失して、体は外部からの刺激に弱い状態となります。

強い倦怠感を感じることもあり、やぶれた水疱をきっかけとして感染症が起こることもあります。
天疱瘡によってダメージを受けた皮膚からはたくさんの体液がしみ出し、いろいろな細菌に感染しやすくなってしまうのです。
尋常性天疱瘡が悪化すると、重度のやけどと同じくらい体にとっては危険な状態となります。

天疱瘡の検査

天疱瘡の診断では、厚生労働省が定めた診断基準が助けとなります。
臨床的診断項目としては、皮膚に多発する破れやすい弛緩性水疱、疱に続発する進行性、難治性のびらんないし鱗屑痂皮性局面、口腔粘膜を含む可視粘膜部の非感染性水疱、びらんないしアフタ性病変、ニコルスキー現象が挙げられています。
つまり、多くの水疱が生じること、水疱の完治が困難なびらんができていること、口内に痛みをともなうびらんが見られること、強い刺激を与えると水疱が生じることなどが天疱瘡の症状として示されているのです。

病理組織学的診断項目では、皮膚生検と呼ばれる皮膚を採取して行う検査の必要性が記載されています。
免疫組織学的診断項目では病理組織学的診断とは異なる種類の皮膚採取検査について記されています。
病変部ないしは外見上正常な皮膚、粘膜部の細胞膜部に免疫グロブリンG(IgG)の沈着が認められると記され、皮膚採取による診断基準が明確となっています。
また、血液検査として流血中より抗表皮細胞膜抗体(天疱瘡抗体)(IgGクラス)を蛍光抗体法で同定すると示されています。

流血中より抗表皮細胞膜抗体(天疱瘡抗体)(IgGクラス)を蛍光抗体法で同定すること、流血中に抗デスモグレイン1抗体や抗デスモグレイン3抗体があることをELISA法で証明する旨も記載されています。
判定と診断については、臨床的診断項目で少なくともひとつと病理組織学的診断項目を満たすこと、免疫組織学的診断項目のうち少なくともひとつを満たすことを条件に、天疱瘡と診断すると記載されています。
また、臨床的診断項目のうち2つを満たし、免疫組織学的診断項目の3つを満たした場合も天疱瘡と診断されます。
診断基準に含まれる検査に皮膚生検がありますが、これは局所麻酔をして皮膚を部分的に採取して行います。
採取した皮膚は顕微鏡で観察され、天疱瘡の特徴が見られるか確認します。

蛍光抗体直接法を行うと、皮膚の基底膜部に抗体の沈着が確認されます。
血液検査では蛍光抗体間接法によって、血液中にIgG抗皮膚基底膜部抗体が含まれるかを確かめます。
ELISA法は最近開発された検査方法ですが、これを行うことで自己抗体の発見が容易になりました。
この方法は保険収載されているため、さまざまな医療機関で検査することが可能です。
天疱瘡は内臓疾患と関連がある場合があるので、それを明確にするための検査が実施されることもあります。

天疱瘡の治療

天疱瘡を改善するには、自己抗体の生成とその働きを弱める必要があるため、免疫抑制療法が有効だと言われています。
現時点では、ステロイド薬を用いた方法が主体となります。
症状がごく限られた範囲に見られる場合、もしくは程度が軽い場合は、ステロイド外用かレクチゾール(DDS)内服だけでも症状を回復に向かわせることは可能だと言われています。
テトラサイクリン、ロキシスロマイシンとニコチン酸アミドを併用するのも、治療に有効だとされています。

テトラサイクリンではなくミノサイクリンを治療に用いることもできますが、間質性肺炎が発症するリスクがあるため、使用には慎重さが必要だと言えます。
最近ははじめにテトラサイクリンとニコチン酸アミドを併用し、1~2週間ほど状態を観察するのが主流です。
効果があまり見られない場合は、ステロイド薬を用いることになります。

ステロイドを用いる場合も、プレドニゾロンを少量用いることは少なくありません。
それでも改善がむずかしい場合は、重度の尋常性天疱瘡と同じ治療法である、ステロイドパルス療法、免疫抑制剤内服併用、血漿交換療法併用などが試されます。
大量免疫グロブリンを注射する方法が世界中で試されていますが、日本国内では保険適用がなされていません。
しかし、今後適応となる可能性はあります。

ステロイド薬は副作用のリスクが高いため、患者のなかには敬遠する人もいます。
しかし、ステロイド薬が開発される前は尋常性天疱瘡が死亡率90%以上であったことから、その有用性は証明されています。
とはいえ副作用のリスクは依然としてあることから、投与量を減らす試みがなされています。

免疫抑制剤を併用することで、ステロイドの投与量を減らすことが可能です。
また通常は、ステロイド薬によって症状の改善が確認できたら、少しずつ量を減らしていきます。
天疱瘡の治療がはじまると、長期間にわたって経過観察が必要となります。
定期的な通院などは必要になりますが、多くの人がもとの日常生活を取り戻しているので、根気強く治療を進めていくことが大切です。

天疱瘡は日常生活にも支障をきたす病気なので、日々の生活も症状を緩和できるような工夫をすることが重要となります。
水疱やびらんが体に生じてしまったら、できるだけ刺激を与えないことが大切となるので、やわらかい素材でできた服を身につけるようにしましょう。
頭からかぶるタイプの衣服は肌がこすれやすいので、ボタンなどがついた着脱しやすい衣服を選ぶのも大切なポイントです。
絆創膏などを直接貼ると肌へ刺激を与えることになるので、病変全体をガーゼでカバーしてその上から絆創膏やネットでとめて動かないようにします。

粘膜症状が強く出ている場合は、ものを咀嚼したり、飲み込んだりするのが困難となります。
そういった場合はできるだけ軟らかい食材を選んで、硬いものは食べないようにしましょう。
口腔内のケアや歯の磨き方を工夫するだけで、痛みがやわらぐことがあります。
歯科医師に相談するなどして、できるだけ症状が悪化しないような方法を習得するといいでしょう。

ステロイド薬を内服している人は、用法用量をしっかり守ることが大切です。
医師に指導された内容をきちんと頭に入れて、ステロイド薬を内服するようにしましょう。
自分の判断で内服を中止するのは、厳禁です。
いきなり内服をやめると水疱が再びあらわれるだけでなく、ショック状態となることもあります。
必ず、医師の指示を仰いで薬を飲むことことが重要です。

ステロイドを服用することで、高血圧や胃潰瘍、骨粗しょう症、肥満、糖尿病、感染症などのリスクが高まります。
発熱など、なんらかの異変を感じたら、できるだけ早く主治医に診てもらい、対処することが自分を守ることにつながります。
家族の協力も必要となるので、病気について理解を深めてもらうようにしましょう。

天疱瘡の症状がある程度回復してからも、体調には十分に気をつける必要があります。
過食は避け、ウォーキングなどの適度な運動を継続するようにしましょう。
また、天疱瘡は早期発見と早期治療が大切な病気です。
放っておくと死亡にいたる可能性もあるので、水疱がなおらない場合などはできるだけ早く皮膚科専門医の診察を受けることが大切となります。

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