*

ギラン・バレー症候群の原因・症状・検査・治療について

公開日: : 自己免疫疾患

ギラン・バレー症候群の原因

ギラン・バレー症候群は筋肉の動作に欠かせない運動神経に障害が起こり、急激に手足に力が入らなくなるという病気です。
運動神経の障害のほかに、手足のしびれなども見られます。
人口10万人につき、1年で1~2人ほど発症すると言われ、特に若年成人と高齢者の発症者が多いと言われています。
男女差はそれほど顕著にみられませんが、男性のほうが発症しやすいとされています。
日本では少なくとも1年あたり2000人以上発症していると言われており、難病(特定疾患)のなかでは発症頻度が高い病気と言えます。
症状が起きる1~3週間前に下痢や頭痛、咽頭痛、発熱、咳といった感冒症状が確認できることが多いため、さまざまなウイルスや細菌の感染が発症のきっかけと考えられています。
そのため、ギラン・バレー症候群は自己免疫の仕組みを介して引き起こされる病気と言われています。
免疫の仕組みは、本来は外部からのウイルスや細菌を撃退するためのものですが、その仕組みに異常が生じることで自分自身を攻撃してしまうのです。
発症後の症状が顕著にあらわれている時期は、半数以上の人の血液中や神経にある糖脂質という物質を攻撃する抗体が確認されています。
それ以外にも、細胞成分やサイトカインなどの液性成分も深く関係していると考えられています。
神経細胞の構成要素のひとつに、軸索という長い枝のような箇所がありますが、ギラン・バレー症候群では軸索の周囲を囲む髄鞘という場所に障害が起こります。
髄鞘の障害には感染によってつくられた自己抗体が働きかけているといわれています。 
細菌やウイルスの感染には多くの人に起こりえますが、大多数は免疫の仕組みが正常に機能しています。
なぜ一部の人だけがギラン・バレー症候群を発症するのかということは、いまだに解明にいたっていません。
自分の体を抗体が攻撃しているかということも、はっきりわかっていないというのが現状です。
ストレスや過労が蓄積し、自己免疫力が落ちているときに、ごくわずかな確率で発症にいたるのではないかという意見もあります。
また、体に溜まった薬や化学物質の影響も指摘されていますが、はっきりしたことは現時点ではわかっていないのです。

ギラン・バレー症候群の症状

感冒症状や下痢が見られてから1~3週間ほど経って、休息に四肢の筋力低下が起こることが多いと言われています。
両手足に力が入らなくなって、動かすことが困難となります。
ほとんどは2~4週間目でピークを迎え、それ以上悪化することはありません。
症状がおさまってからは少しずつ体はもとに戻っていき、3~6ヶ月ほどで完治します。
しかし、10~20%の患者には後遺症が残ることがわかっており、深刻な影響をおよぼします。
ギラン・バレー症候群は感覚障害はそれほど顕著に見られず、運動神経の障害のほうが深刻です。
およそ半数の患者には、顔面の筋力低下が確認されています。
そのため、顔面の筋肉や眼の動作を司る筋肉に力が入らなくなります。
外眼筋支配神経に障害が起こってものが2つに見える症状、しゃべりにくい、飲み込みにくいといった症状が見られることもあります。
10~20%ほどの患者には呼吸筋の麻痺が確認され、場合によっては呼吸ができなくなることもあります。
高血圧や起立性低血圧、頻脈、不整脈など自律神経に生じる性症があらわれることもあります。
割合としてはごくわずかですが、尿失禁や排尿障害などが起こる場合もあります。
ギラン・バレー症候群、くも膜下出血、脳出血、脳梗塞などに近い症状があらわれることがありますが、異なるのは知覚障害や筋力低下などの症状が体の両側で起こるという点です。
病気の回復が困難とされる患者としては、発症から治療をはじめるまでに2週間以上経過した場合、口咽頭筋麻痺が見られる場合、人工呼吸器が必要な場合、電気生理学的に軸索障害の所見もしくは複合筋活動電位振幅の消失がある場合、キャンピロバクター・ジェジュニ(細菌の一種)の先行感染がある場合、年齢が60歳以上である場合などです。

ギラン・バレー症候群の検査

ギラン・バレー症候群の診断ではまず髄液検査を実施されます。
髄液検査はたんぱく量などを確かめるもので、腰部分の背骨と背骨の間のクモ膜下腔に針を刺して髄液を抜いたのちに調査します。
海老ぞりの姿勢で注射針を刺すため痛みをともない、検査後しばらくは安静にしておく必要があります。
ギラン・バレー症候群の場合、発症後1週目経過後にたんぱく量の上昇が確認されます。
このケースでは、髄膜炎のように髄液の細胞数が一緒に上昇することがないため、ギラン・バレー症候群の疑いが強まります。
ほとんどの患者で、末梢神経を構成要素のひとつである髄鞘の糖脂質に対する自己抗体が確認され、それも所見のひとつとなります。
抗体値を調べる場合は、抗体値検査(抗ガングリオシド抗体検査)が行われます。
また、神経伝導検査もしくは筋電図検査を行うと、末梢神経伝導速度が遅れるといった異常が確認されます。
神経伝導検査は電気信号の伝達速度を測定するというもので、末梢神経がどの程度損傷しているのかということもわかります。
手足に針を刺して、電流を流すことで調べます。

ギラン・バレー症候群の治療

発症後はできるだけ早く血漿交換法、もしくは免疫グロブリンの大量静注療法を行う必要があります。
血漿交換法は、患者の太めの血管から血液を採取して抗体のある血漿を取り除くというものです。
除去後は輸血用の血漿を入れて、再度血管に戻します。
血液は血漿と血球で構成されています。
採取された血液を血漿分離膜により血球と血漿に分けたあと、抗体が見られる血漿をすべて廃棄して、新鮮凍結血漿あるいはアルブミンという血漿成分のひとつを補充して、もともとの血球成分と合わせ血管に戻していくのです。
1度の検査につき3時間ほどかけて行われ、病状が軽度な場合や重度の場合など段階に応じて、実施回数が決められます。
ただし、体重が40kg未満の人、小児、自律神経障害がある人、高齢者、循環不全や腎障害がある人は血漿交換法は行えないとされています。
また、血漿交換法は機械などをつかうため、すべての医療機関で実施できるわけではありません。
この治療は体の血液の多くを入れ替えるという大がかりなものなので、副作用のリスクもあります。
拒絶反応や体力の消耗、感染症などのリスクがあり、施術中に血圧低下や心拍数上昇といったことが起こる場合もあります。
この方法は発症後すぐに実施しなければならず、30日以上経過していると効果があらわれないと言われています。
免疫グロブリン大量療法は、献血などによってとられた抗体を集めた無色透明の液体を静脈に大量に入れるというものです。
その仕組みははっきり解明されていませんが、患者の免疫システムを刺激し、抑制、コントロールすることで症状の悪化を防ぐことができると言われています。
免疫グロブリン大量療法は血漿交換法と同じくらいの効果があると言われています。
1日に4~6時間ほどの時間をかけて点滴し、5日間を1クールとして、効果が見られない場合は1週間あけてからさらに注入していきます。
免疫グロブリンの大量静注療法は日本では2000年に厚生省により許可され、保険対象となりました。
血漿交換とちがって特別な設備なしでできるため、多くの医療機関で実施可能な療法です。
副作用は血漿交換と比べて弱いですが、血栓や筋痛、頭痛、肝機能障害が起きやすいといったものがあります。
ステロイドは効果の高い抗炎症薬ですが、さまざまな副作用のリスクが指摘されています。
ギラン・バレー症候群は末梢神経の炎症が起きる病気なので、以前はステロイドが治療につかわれていました。
しかし、現在では経口投与、静注療法のどちらも効果はあまりみられず、むしろ病状を悪化させる恐れがあることがわかったため、あまり使われなくなりました。
ギラン・バレー症候群によって呼吸不全が起きたバイアは、酸素吸入などの処置がされます。
呼吸不全が重度の場合は、経口気管挿管や気管切開して人工呼吸器管理が行われます。
また、器官チューブを通して痰の吸引も実施されます。
食べ物を飲み込むのがむずかしく、経口摂取困難を起こしている場合は点滴や経管によって栄養管理が行われます。
排尿困難が起きている場合には、カテーテルを用いて導尿がされます。
また、長期的に臥床していることで膀胱炎や下肢の血栓症、肺炎などが起こる場合はあり、そのための治療が行われるケースもあります。
特に床ずれは深刻なので、定期的に体位交換を行う必要があります。
病状が回復にむかうと神経再生によって、痛みが生じることがあります。
痛みの種類としては、手足が焼けるような痛み、もしくは刺すような痛みと表現されます。
これらの痛みは知覚神経が快復する途中で起こる異常感覚のひとつで、体重の増加や運動によって悪化すると言われています。
そのため、この痛みがつづく間はリハビリテーションは行わず、抗けいれん剤や抗うつ剤、鎮痛剤などによって痛みを緩和させます。
麻痺した手足の機能を取り戻すためには、自己治癒とリハビリテーションが欠かせません。
リハビリテーションは末梢神経の麻痺がある程度おさまったタイミングで、血漿交換療法にかわってはじめるのが一般的です。
リハビリテーションを行うことで、関節の拘縮や筋肉の萎縮を予防し、麻痺した手足の機能を取り戻すことができます。
リハビリテーションはこれまで治療をしていた医療機関で継続して行われることもありますが、リハビリ施設が不十分な場合などは専門の病院に転院して行われます。
主治医や作業療法士、理学療法士が連携して指導することで、効率よく進めていくことができます。
長期臥床の患者にとってリハビリテーションは特に重要で、後遺症を予防するためにも精力的に取り組むことが大切となります。

スポンサーリンク

関連記事

自己免疫性膵炎の原因・症状・検査・治療について

自己免疫性膵炎の原因 自己免疫の仕組みになんらかの異常が生じることで、膵臓に障害が起こる疾患を

記事を読む

橋本病の原因・症状・検査・治療について

橋本病の原因 甲状腺が慢性的な炎症状態になる疾患のことを、橋本病と言います。 1912年に九

記事を読む

1型糖尿病の原因・症状・検査・治療について

1型糖尿病の原因 インスリンを生成する膵臓を形作る細胞が、破壊もしくは消失することで起こる疾患

記事を読む

特発性血小板減少性紫斑病の原因・症状・検査・治療について

特発性血小板減少性紫斑病の原因 特発性血小板減少性紫斑病は、厚生労働省による特定疾患に指定され

記事を読む

自己免疫性溶血性貧血の原因・症状・検査・治療について

自己免疫性溶血性貧血は、免疫が赤血球をまるで異物のように攻撃することによって起こる貧血です。

記事を読む

類天疱瘡の原因・症状・検査・治療について

類天疱瘡の原因 類天疱瘡は皮膚に水疱性皮疹が生じる自己免疫性皮膚疾患のひとつで、高齢者に多く見

記事を読む

原田病の原因・症状・検査・治療について

原田病の原因 原田病は、ベーチェット病、サルコイドーシスとともに、日本国内では比較的発症しやす

記事を読む

巨赤芽球性貧血の原因・症状・検査・治療について

ビタミンB12あるいは葉酸の欠乏によって、血液の成分が正常につくられなくなり、巨大な赤血球ができ

記事を読む

慢性円板状エリテマトーデスの原因・症状・検査・治療について

慢性円板状エリテマトーデスの原因 慢性円板状エリテマトーデスは皮膚疾患のひとつで、鱗に似た赤い

記事を読む

後天性表皮水疱症の原因・症状・検査・治療について

後天性表皮水疱症の原因 基底膜部と真皮の結合部分である係留線維には、タイプVIIコラーゲンとい

記事を読む

グッドパスチャー症候群を詳細に:原因,症状,検査,治療など

グッドパスチャー症候群(ぐっどぱすちゃーしょうこうぐ

B細胞と抗体による体液性免疫

免疫には抗体が関係する体液性免疫、そして抗体が関係しない

免疫グロブリン製剤の働き・取り方・副作用・代表的な製剤などについて

人間の体は血漿成分によってさまざまな脅威から保護されてお

リンパ組織とは

生体防御のなかで重要な役割を果たすものをリンパ球といい、

自然免疫と適応免疫

免疫にはいくつか種類があり、自然免疫と適応免疫も免疫のひ

→もっと見る

PAGE TOP ↑