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重症筋無力症の原因・症状・検査・治療について

公開日: : 自己免疫疾患

重症筋無力症の原因

筋肉と末梢神経の接合箇所に生じる自己免疫疾患で、筋肉側の受容体が自己免疫の攻撃を受けて壊される状態を重症筋無力症と言います。
体中の易疲労性や筋力低下などが見られ、眼瞼下垂、複視などの眼にまつわる症状が顕著にあらわれるという特徴をもちます。
眼の症状のみ起こる場合は眼筋型、全身に症状があらわれる場合は全身型と、それぞれ分類されています。
重症筋無力症は1987年の時点では人口10万人あたり5.1人とされ、全国で発症している人はおよそ6000人と言われていました。
2006年では10万人あたり11.8人で、発症者数は15100人と推定されています。
男女比を見ると、女性のほうが発症しやすいことがわかります。
発症する時期は5歳未満が比較的多く、女性は30代~50代にかけてゆるやかなピークが見られ、男性は50代~60代に発症のピークが見られます。
なお、特定の地域や職業によって発症確率が高まるということはありません。
重症筋無力症は免疫系の働きによって生成された抗体が、神経伝達物質のアセチルコリンと反応する受容体を攻撃することで起こります。
攻撃を受けると神経細胞と筋肉の信号伝達が阻害され、体をスムーズに動かすことが困難となります。
なぜ体がアセチルコリン受容体を攻撃するのかということは、現時点ではよくわかっていません。
一説では、胸腺の機能不全と関係しているのではと言われています。
免疫系の細胞の一部は、自分の体にとって異物となるかどうかを判断する能力を胸腺によって獲得します。
胸腺には、アセチルコリン受容体をもつ筋肉細胞も存在します。
詳しい理由はわかりませんが、胸腺が免疫系の細胞にアセチルコリン受容体を攻撃する抗体を生成することを支持しているのではないかと指摘されているのです。
こういった自己免疫異常の素因は遺伝する場合があり、重症筋無力症を発症した半数以上の人には胸腺の肥大が確認されています。
さらに、およそ10%の人に胸腺腫瘍が確認され、その半数は悪性の腫瘍だと言われています。
重症筋無力症患者のなかには、アセチルコリン受容体に対する抗体が確認されていないにもかかわらず、神経筋接合部の形成に関わる酵素に対する抗体が確認されています。
そういったケースでは、通常とはちがう方法での治療が望ましいとされています。
また、抗アセチルコリン受容体抗体価自体は症状の重傷度に必ず関連するということはないと一般的には言われています。
しかし、抗体価の変化によって症状が悪化もしくは軽減することはよくあると言われ、時期によっては特に両者の関係が密接となる場合もあります。

重症筋無力症の症状

特に顕著に見られる症状としては、眼瞼下垂と複視が挙げられます。
重視は、ものを見たときに二重に見えるという眼症状です。
こういった症状は時期とは無関係に、あらわれやすい症状と言われています。
ほかの症状があらわれない眼筋型の重症筋無力症もありますが、ほとんどは呼吸・嚥下筋を含む全身の骨格筋の筋脱力症状が見られます。
腕や脚の筋力が落ちて、手をぐっとにぎろうとしてもうまくできなくなることがあります。
首の筋肉も弱体化することがありますが、感覚に関する障害は見られません。
呼吸困難や球症状が起こることもあり、そういった症状があらわれると命の危険性が高まります。
筋脱力の症状はほかの疾患でも見られますが、運動をつづけることがむずかしく休息すると脱力状態が緩和されるというのがほかの疾患とのちがいです。
たとえば、重症筋無力症では以前はダンベル運動などがうまくできていた人が、数分運動しただけで力が出なくなるといったことが起こります。
また、1日のなかで症状の変動が確認されています。
筋力の低下がどの程度起こるかは、日や時間帯によって変化し、病状がどういった変遷をたどるかということも人によって大きく異なります。

重症筋無力症の検査

顔面や眼を中心に一過性の筋力低下が見られる場合、症状が確認される筋肉を使用すると筋力低下が悪化して安静にすると症状がおさまる場合は、
重症筋無力症の可能性が高いと判断されます。
重症筋無力症はアセチルコリン受容体に異常が生じることで起こるため、薬剤を投与してアセチルコリン濃度を高める検査が行われるのが一般的です。
この検査に用いられることが多いのがエドロホニウムという薬剤で、静脈内注射によって体内に注入されます。
検査時には最初に症状がみられる筋肉を疲れるまで動かして、薬剤を注入します。
その後、筋力が短時間で改善するようなら、重症筋無力症の可能性が濃厚となります。
重症筋無力症の診断の精度を高めるために、ほかの検査が行われることもあります。
そのなかのひとつが筋電図検査で、これは筋肉を刺激して電気的活動を調べるというものです。
また、血液検査を行ってアセチルコリン受容体に対する抗体が見られるか調べることもあります。
血液検査では別の病気が原因となっている場合も明らかになるため、重要な検査のひとつと言えます。
重症筋無力症との関連が深い胸腺について調べるために、胸部のMRI検査もしくはCT検査が実施される場合もあります。
こういった画像検査を行うと、胸腺腫がある場合も発見することができます。

重症筋無力症の治療

筋力が低下している場合はその回復が優先されるため、薬剤投与が行われます。
薬剤には自己免疫反応をコントロールして病気の悪化を抑制する働きもあるため、メリットが多いと言えます。
ピリドスチグミンという内服薬はアセチルコリン量を増やす作用があるため、筋力が改善される場合があります。
起床時に重度な筋力低下や嚥下困難が見られる場合は、長時間作用型のカプセルを夜のうちに飲みます。
どれくらいの薬剤を用いるかは医師が一定期間ごとにコントロールする必要があり、一過性の筋力低下が生じている場合は量を加減することになります。
薬剤の量が多すぎても筋力低下が引き起こされるケースもあり、病気が原因なのか薬剤が原因なのか判然としないこともあります。
また、こういった薬剤を長期間にわたって用いると、効き目が薄くなってくることもあります。
特に筋力の低下が進行しているケースでは、薬剤の有用性が落ちている恐れもあり、専門性の高い経験豊富な医師のサポートは欠かせないと言えます。
ピリドスチグミンであらわれやすい副作用は、下痢や腹部のけいれんなどです。
こういった副作用を抑えるため、アトロピンやプロパンテリンといった消化管活動を抑制する薬剤を別途服用することもあります。
自己免疫反応を抑制することを目的に、プレドニゾロンなどのコルチコステロイド薬や、シクロスポリンやアザチオプリンなどの免疫抑制薬を用いるケースもあります。
重症筋無力症の治療の多くは、コルチコステロイド薬を長期間服用することになります。
コルチコステロイド薬を服用しはじめた当初は症状が悪化することがありますが、数ヶ月以内には改善します。
1度症状の改善が確認されたら、薬は少しずつ減らしていきます。
コルチコステロイド薬は長期間にわたって服用すると、さまざまな副作用があらわれることがあります。
そのため、できる限りコルチコステロイド薬を中止あるいは減量するために、アザチオプリンが用いられることもあります。
アザチオプリンの場合、症状が改善されるまでに18ヶ月要すると言われています。
ドナー集団から採取した多種多様な抗体を含む溶液である免疫グロブリンを用いることもあります。
免疫グロブリンは1日1回、5日間静脈投与するのが一般的です。
3分の2以上の患者は1~2週間ほどで症状が緩和され、その効果は数ヶ月継続します。
薬剤を試しても症状に変化が見られない場合、筋無力症クリーゼが発症した場合は、血漿交換療法が実施されることがあります。
血漿交換療法はフィルターによって血液から異常抗体を除去するというものです。
胸腺腫が見られる場合は、胸腺腫の拡大を予防することが重要となります。
そのため、場合によっては胸腺を摘出するための手術が行われることになります。

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