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ステロイド恐怖症

公開日: : ステロイド

ステロイドバッシング

1992年のニュース番組で、キャスターが「ステロイドは最後の最後まで使ってはいけない薬」とコメントしたことに端を発し、その後テレビを中心とした数々のマスコミがステロイドバッシングを行いました。

テレビをみた多くのアトピー性皮膚炎の患者が、過度にステロイドを恐れる「ステロイド恐怖症」になり、その影響は現在にも続いています。
このような報道が生じたのは、ステロイド薬には深刻な副作用があり、極めて有効である一方で、コントロールしながら用いなければならないこと、自己判断で中断すると「リバウンド現象」が起こることを、医師がきちんと説明せず、安易にステロイド薬が処方されていたという現実があります。

治療に先立って、用いる薬の目的や効果、副作用などを、患者が理解できるように説明するというインフォームドコンセントがおろそかになったことで、大々的で誇張的なマスコミの報道に、病気で苦しむ人たちが翻弄されたのは残念なことです。

脱ステロイド療法

ステロイドバッシングのあと、「脱ステロイド療法」が大々的に取り上げられたために、一時期「脱ステロイド」を謳う一部の医師や民間療法などが急増しました。
「脱ステロイド」治療の全てが全て無効なものではないのですが、アトピー性皮膚炎の「リバウンド現象」に対して、「毒が出て行っている好転反応だ」などと判断することは、適正でないうえ、患者を無駄に苦しめたのは事実です。

もちろん、ステロイドさえ使用していれば、生活習慣や食事が乱れていても大丈夫ということではありません。
どのような病気であっても、病気にあったバランスのよい食事、適度な運度、十分な睡眠、ストレスからの解放などの生活習慣改善のうえに、回復はなりたっています。

医学的見地からみても、ステロイドは治療に欠かせない薬であるにもかかわらず、こういった極端な療法がブームになり、さらにそこに高額な健康食品や医療器具などを販売する悪徳業者が参入したこととあいまって、いろいろな病気の、多くの患者が翻弄されることになりました。

ステロイドバッシングの影響

この状況を重く見た日本皮膚科学会が、2000年に、「ステロイドの適正な使用が正しいアトピーの治療法であることを患者に説明し、ステロイドに対する混乱をしずめる目的」で、「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」を発表し、皮膚科医の啓蒙活動をはじめました。

現在では、テレビではステロイドバッシングに準ずる報道はなされなくなりましたが、「ステロイドはこわい薬だ」というイメージが流布したことで、アトピー性皮膚炎だけではなく、喘息やメニエール病などの治療の現場でもステロイドを嫌う患者がたくさんいます。

特に、喘息のステロイド吸入薬は、喘息の治療に有効であるにもかかわらず、ステロイドの悪いイメージのせいでなかなか受け入れなれないようです。
ネットの質問掲示板でも、「子供にステロイド薬が出されたが大丈夫か」「ステロイドの注射をされたが副作用はないか」といった投稿が数多く寄せられています。

医師がとるべき姿勢

たしかに、ステロイドは適切に利用しなければならない薬です。
ステロイド薬のコントロールは、医師が様子をみながら調整したり、副作用を防いだり治療したりする薬を出さなければなりません。

ゆえに、医師は、多くの人が持っているイメージを踏まえたうえで、きちんと説明する必要があり、単に「それはステロイド恐怖症ですよ」などど揶揄する態度は取るべきではありません。

患者側が心がけること

一方患者もやみくもに「ステロイドは使いたくないんで」などというのではなく、自分がステロイド薬について聞いた噂や不安に思っていることをきちんと医師に伝え、納得できるように説明を求めましょう。

そして、コミニュケーションに基づいた適切な治療を行うことで、ステロイド薬と付き合ってゆくことが大切です。
その際、どのような治療プランでステロイドをコントロールしていくのかを、医師と共有しましょう。

治療の目的として、全く病気のない人と同じレベルを目指すのか、症状は出ても日常生活が送れればよしとするのか、スポーツや旅行を楽しく過ごしたいのか、短時間の勤務ができるようになればいいのか…。

アトピー性皮膚炎やアレルギー性喘息慢性的な病気では、こういった目的を立てて治療方針を決定していく際、患者の希望をきちんと伝えることが重要です。
日常生活で気をつけなればならないことや、もし副作用が出た時にはどうすればよいのかなど、具体的な事柄について医師と相談しましょう。

そのためにはかかりつけ医、主治医をもつことがとても大事です。
決してあちこちの病院を複数にわたって受診する「ドクターショッピング」はしてはいけません。
ドクターショッピングは、ステロイドのコントロールを困難にするだけではなく、病気そのものの治癒を遅らせてしまうことになります。

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